Marc Jones
国際決済銀行(BIS)は28日公表した年次経済報告書で、公的債務の増大から金融の脆弱性、人工知能(AI)ブームの持続可能性に至るさまざまな世界的圧力がリスクを増大させ、規律ある政策形成の必要性が浮き彫りになっているとの見解を示した。
報告書が警鐘を鳴らしたのは逼迫した財政状況、長引く供給ショック、執拗に高いインフレが再燃するリスクなど、複雑に絡み合った脆弱性だ。
BISは、ここ数カ月は経済活動が底力を維持しているものの、安定を維持するために政策立案者は断固とした行動を取らなければならないと訴えた。
総支配人のパブロ・エルナンデス・デコス氏は「世界経済への(余計な)揺れ動きを避けるため、政策行動は互いに補完し合わなければならない。最終的には健全な財政・金融基盤が成功の鍵を握る」と語った。
報告書は、インフレが再び加速しており、供給網の混乱が頻発することで、家計や企業の間で高いインフレ期待が定着してしまう恐れがあると指摘。デコス氏は「中央銀行がインフレ期待の安定が損なわれる状況を観察した場合、行動する用意があるというのが、われわれが伝えたい主なメッセージだ」と説明した。
またデコス氏は、最近の中東における米国とイランの停戦とホルムズ海峡の再開は、極端なシナリオが回避されることを意味する「朗報」だとしつつも、石油市場が「正常化」するには時間がかかる公算が大きいとくぎを刺した。
BISはAIに関連する現在の投資急増の持続性を巡る不確実性にも言及。AIは生産性向上の期待を通じて信頼感を高めて成長を支えてきたが、一方で雇用への不安を煽り、供給制約や激しい競争が、過去の景気循環に見られたような過剰投資を招く恐れがあると分析した。
もっともデコス氏は、現時点で中銀がそれに対してどのように対応すべきかを規定するのは「賢明ではない」と述べた。
もう1つの懸念要素として金融面の脆弱性が挙げられている。
資産価格の高騰と投資家が自己満足に陥っている兆候を通じて、主要な債券市場はより脆弱化し、AIブームの資金調達も供給網全体で債務や複雑な資金調達構造への依存を強めているように見える。
同時に過去最高水準の公的債務と、大規模なヘッジファンドが支配力を強める国債市場が「新たなソブリンと金融安定の結び付き」を生み出しており、リスクが増大しつつある。
BISの金融経済局長代行を務めるフランク・スメッツ氏は「新たな財政と金融安定のつながりは、国債価値のより頻繁かつ急激な下落を意味してもおかしくない」と述べ、こうした変動が金融環境を急速に引き締める可能性があると付け加えた。
デコス氏は、主要経済国における債務水準を削減する必要性に関するBISのメッセージが「緊急性」を伴っていると強調した上で「なぜなら現在債務は高水準にあり、それが非銀行金融仲介機関を通じて資金調達されているという事実があるからだ」と説明した。
BISは政策立案者に対して、物価の安定を優先し、財政の持続可能性を確保するとともに銀行部門以外への監督を調整・強化して構造改革を追求するよう提言している。
デコス氏は「政策立案者は直ちに行動しなければならない。遅れれば必要な調整のコストが大きくなるだけだ」と述べた。