Saqib Iqbal Ahmed Laura Matthews
6月の米雇用統計は、投資家にとって安心を誘う材料になった。労働市場の過剰な強さが米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢を強め、今年の相場上昇をけん引してきたハイテク株の勢いを奪うのではないかと懸念され始めていた矢先だったからだ。
米労働省が2日発表した6月の非農業部門雇用者数の伸びは予想を下回り、過去2カ月分の数字も下方修正された。これは労働市場が冷え込みつつも安定していることを示唆し、市場ではFRBの早期利上げ観測が後退した。
足元の株式市場はバリュエーションの急騰や時価総額1兆ドル規模の企業の乱高下、周期的な急落などにより、一部でバブルが発生しているのではないかとの不安が強まっていたが、今回の雇用統計結果を受けてひとまず持ちこたえる余地が生まれた形だ。
50パーク・インベストメンツのアダム・サハン最高経営責任者(CEO)は「この雇用統計でFRBが直ちに利上げする事態を懸念していた人々はほっと一息つくことができるだろう」と述べた。
一方で「インフレへの恐怖が終わったわけではない。短期的にはFRBが利上げに踏み切らなければならないという圧力が取り除かれただけだ」とくぎを刺した。
6月に投資家が目の当たりにしたのは、年初来で10%に達していた株価上昇がいかに早く崩れ去るかという光景だった。FRBは6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利据え置きを決めたものの、物価上昇への懸念から年内に利上げする可能性を示唆したことが影響したためだ。
これは人工知能(AI)関連企業が借り入れ主導で大規模投資に動いている状況を巡る投資家の心配をあおり、市場を支配してきた大手ハイテク銘柄を中心に株価の下押しを招いた。
しかしこれまでの数カ月にわたる力強い雇用増加の傾向が一変した6月のデータは、労働市場がインフレを加速させていないという確信をFRBの政策担当者に与えるはずだ、と投資家は口をそろえる。
LSEGのデータによると、2日の金利先物市場では、FRBが9月FOMCまでに利上げする確率は、ほぼ五分五分となっている。
多くの専門家は、最近の雇用データの振れの大きさを踏まえ、単月の数字を過大評価しないよう警告している。それでも今回の結果はFRBに時間的余裕を与え、少なくとも短期的には株式市場にとって追い風になるとみられる。
サビー・ウエルスのアンシュル・シャルマ最高投資責任者は「労働市場の軟化とインフレの鈍化という一貫したパターンが定着すれば、FRBのより緩和的な姿勢を後押しすることになり、株式市場に対する楽観的見通しを支えるだろう」と述べた。
さらに同氏は、本当に金融政策が緩和方向に進む可能性が出てくれば、特に長期的な成長を重視するテクノロジーなどのセクターにとっては大きなプラスになると付け加えた。
<利上げ観測さらに後退するか>
市場でFRBの年内利上げ観測はわずかに後退したものの、市場と、年内は利上げが行われないと考える多くのエコノミストの見解との間には依然として温度差がある。つまり今後さらに市場の織り込みが修正される余地があることがうかがえる。
確かに現在の株式市場においては経済データよりも相場の勢いや企業収益に関する期待感の方が大きな原動力となっている。その意味ではS&P総合500種構成企業の第1・四半期決算が好調だったことを受け、投資家は今後数週間で発表される第2・四半期決算が、現在の高いバリュエーションを維持できる内容かどうかを注視している。
とはいえ市場の利上げ観測がさらに後退すれば、株価にとってはさらなる強気材料になり得る。
ネーションワイドのチーフ市場ストラテジスト、マーク・ハケット氏は「そうなれば間違いなくより『リスクオン』の姿勢が強まる」と予想した。