Hyunjoo Jin Heekyong Yang

韓国の半導体大手サムスン電子 KRX:005930とSKハイニックス KRX:000660は、人工知能(AI)ブームに乗じる形で、総額数千億ドル規模という巨額の投資を行う史上最大級の賭けに出た。だがこれほどの生産能力拡充計画は、今後AI関連の支出が冷え込んだ場合には非常に大きなしっぺ返しに見舞われるのではないかとの懸念も高まっている。

両社の決断は李在明大統領から高く評価され、政府の半導体政策を後押しする象徴的な動きとなった。これまで業界はメモリー価格の急騰と暴落を繰り返し体験してきた歴史から、設備投資には慎重な姿勢を維持してきたが、今回の動きはそうした方針からの大きな転換を意味する。

政府は両社の計画を通じて、今後5年で国内のメモリー半導体の生産能力が倍増することを期待。サムスンとSKハイニックスは、既存の龍仁(ヨンイン)半導体クラスターにおける工場建設も加速させ、通常7-12年かかるとされる建設期間を短縮してより早期に新たな生産能力を市場に投入する方針だ。

両社が掲げた投資総額は3200兆ウォン(2兆0700億ドル)に及び、これには南西部に新設される800兆ウォン規模の半導体クラスターなど既存計画も含まれる。

韓国は現在、AI投資の世界的な拡大の恩恵を受ける「勝ち組」の一角となりつつある。その背景には、AI向け先端半導体に不可欠な高帯域幅メモリー(HBM)でサムスンとSKハイニックスが圧倒的な競争力を持っている点がある。

今回の投資決定は、AI向けクラウド事業者(ハイパースケーラー)からアップルのような電子機器メーカーまで、幅広い顧客がメモリー需要を急増させていることに対応した形だ。現在は世界的に供給不足が続いており、半導体価格も今年第1・四半期だけでほぼ倍増した。

ただこうした追い風にもかかわらず、半導体工場の建設と生産立ち上げには長い時間を要するため、今回の大幅な増産能力が実際に市場に効果をもたらすのは次の10年に入ってからになる見通し。モーニングスターのアナリストは「今後数十年にわたり設備投資が加速すれば需給バランスが崩れ、過剰供給リスクが高まる」と警告するとともに、現在のメモリー市況の好調がAI企業の投資継続に引き続き依存せざるを得ない点に言及した。

ソウル大学のイ・ジョンホ教授も「企業の将来を左右しかねない規模の投資だが、3年後の需要すら見通せない中で、慎重な判断が求められる」と指摘し、今回の決定がやや性急だったように見受けられると付け加えた。

<政治的思惑も>

実際サムスンとSKハイニックスの高収益は比較的最近の現象で、AI需要の拡大とメモリー不足によって生まれたと言える。過去には価格暴落による深刻な打撃を受けており、SKハイニックスは2001年に経営破綻寸前まで追い込まれ、両社とも23年には大幅な赤字を計上している。

それでも近年のAIブームの拡大とともに、政府や与党からは南西地域への工場建設を促す声が強まり、これまで産業化の恩恵が及びにくかった地域への投資が政治的な意味合いも帯びて議論されてきた。つい2カ月前まで懐疑的だったSKハイニックスの崔泰源会長も、最終的にはこの流れに逆らえなくなった。

両社は今回の計画を通じて、政府の許認可迅速化などの支援を受けて龍仁での投資を加速させられると説明する。

野村証券のアナリスト、CWチョン氏は「他の地域への投資は、龍仁半導体クラスターをめぐる不確実性をヘッジする方法になり得る」と述べた。

<本気のメッセージ>

もっともアナリストの多くは、過去の経験を踏まえれば企業側は柔軟に投資ペースを調整するだろうとみている。例えばサムスンは、40年までの投資計画を掲げつつも、市況に応じて支出を見直す方針を明言している。実際24年には市況悪化を受けて平沢工場の建設を約2年間中断した経緯もある。

SKハイニックスも需要動向を見極めながら投資規模を決める考えを示しており、現時点では依然として供給不足の解消が難しいとの認識を示している。

一連の動きを、韓国がAI時代の中心的プレーヤーを目指すための正しい道だと評価する声もある。アイエム・セキュリティーズ調査責任者のコ・テボン氏は「今回発せられたのは韓国が世界トップ3のAI国家を本気で目指す意思があるというメッセージだ。単なる言葉だけでなく、政府が投資実現を約束している」と述べた。