Tatiana Bautzer Gertrude Chavez-Dreyfuss

人工知能(AI)関連投資に伴う企業の債券発行を通じた借り入れ拡大に歯止めがかかる気配がない。そうした中で、銀行は増大する資金需要に対応するため、新たな債券発行の手法も提示している。

半導体、クラウド事業インフラ、データセンターなどへの巨額投資を背景に、いわゆる「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大IT企業が進めているのは資金調達の多様化だ。例えばドル市場への過度な集中を避け、より幅広い投資家層にアクセスするため、ユーロや円など複数通貨での債券発行を積極的に拡大している。過去12カ月間だけでも、米アマゾン・ドット・コム NASDAQ:AMZNとグーグル親会社アルファベット NASDAQ:GOOG は計600億ドル規模の複数の通貨建て債券を発行した。

米金融大手モルガン・スタンレーの投資適格債部門グローバル共同責任者テディ・ホジソン氏は「アルファベットとアマゾンは欧州、カナダ、アジアといった世界市場に分散して調達している」と指摘する。こうした大型案件はユーロ、ポンド、円市場における発行記録を塗り替えるなど、世界の債券市場の構造にも影響を与えている。

実際、アマゾンは今年3月にユーロ建てで145億ユーロ(165億ドル)を調達し、欧州社債市場として過去最大の起債を実施。アルファベットは円、カナダドル、スイスフラン、ポンドといった複数通貨で過去最大規模の発行を記録したほか、ハイテク企業としては1997年以来となる100年債の発行にも踏み切っている。

こうした動きで浮き彫りになったのは、ハイパースケーラーの莫大な資金需要だ。フランスの金融大手BNPパリバによると、今年のハイパースケーラーによる設備投資額は約7250億ドルに達する見込みで、昨年半ばの水準からほぼ倍増している。

問題は、投資の伸びが営業キャッシュフローの増加を上回っている点にある。これによって企業は外部資金への依存を一段と強め、債券市場へのアクセス拡大が不可欠になった。

<データセンター担保の新たな資金調達>

これに呼応し、銀行側もAI関連の新興企業やデータセンター事業者向けに新しい資金調達スキームを開発している。特徴的なのが、データセンターの賃貸契約を裏付けとする仕組みで、場合によっては建設前からテナント契約を結び、将来のキャッシュフローの見通しを確保した上で資金を調達する。

代表的な事例が、暗号資産マイニング企業傘下のスティングレー・コンピューターによる約8億1000万ドルの債券発行。この案件は、アマゾンとのデータセンター賃貸契約を担保としており、募集額の9倍の応募を集める人気を見せた。

このような取引は昨年から始まり、これまでにおよそ15件が高利回り債投資家向けに販売されている。構造としては建設ローンに近く、将来収益を前提とした資金調達の新しい形と言える。

<消化に懸念も>

もっとも、供給が拡大されるAI関連債券を市場で吸収しきれるかどうかについては、投資家の間では徐々に懸念も広がりつつある。モルガン・スタンレーのホジソン氏が言及したのは、今年の投資適格債発行額が初めて2兆ドルを超える可能性だ。

既にハイパースケーラーによる債券発行額は昨年全体の水準を上回っており、BNPパリバは今年の起債規模が2500億ドル前後に達すると見込んでいる。

一方、こうした債券は信用力が高く流動性も豊富なため、市場の需要が依然として強いのは間違いない。クロスマーク・グローバル・インベストメンツのビクトリア・フェルナンデス氏は「高格付けで需要は旺盛、流動性も分厚い」と評価する。ただし、「同じ企業が繰り返し市場に資金調達に来るようになると、懸念材料になり得る」とくぎを刺した。

最近は株式の売り出しも相次いで発表されており、企業の資金ニーズが債券と株式の双方で拡大している可能性も指摘されている。

今のところAI関連債券の急増が市場の消化能力を超えたという兆しは確認されていない。バークレイズによると、米国の投資適格債に占めるAI関連の割合は約15%に上るが、より広範な社債指数での比重は依然として小さい。

マニュライフ・インベストメント・マネジメントのジェフ・ギブン氏は「ハイパースケーラーは長期的なAI投資を拡大し続けており、資金需要の流れは当面続く」と分析。現状の環境条件が崩れない限り、こうした債券に対する投資家の需要は維持されるとの見方を示した。